コーチングをしていると多く寄せられる質問の中に、「単語や文法の勉強をしているのに、
話そうとすると英語が組み立てられません。なぜでしょうか。」というものがあります。
この記事でわかること:
・組み立てられない根本的な原因(1):和文、英文それぞれの「述語の位置」への認識
・組み立てられない根本的な原因(2):情景描写スキル
・組み立てられない根本的な原因(1)への対策
・組み立てられない根本的な原因(2)への対策
組み立てられない原因を詳細に見て行きましょう。
(1) 第一に、日本語が主語補語述語の順のため、話し始めて述部(結論)まで時間があるのに対し、英語は話し始めてすぐに結論である述部の展開を迫られる事に関係しています。
主語述語と続く事は知っていても、主語を言ったとたんに止まってしまうのは、適切な述語に備える前に話し始めてしまっている事が背景にあります。
英語を日本語の様にスムーズ話すためには、あくまでも結論(適切な述語V)を話し始める前に仕込んでおく必要があるのです。
(2) もう一つの要因は、「日本人の英語教育に情景描写的トレーニングがないこと」であることであると思います。
例えば、ATMからカードが出てこない時、受話器を取って係りの人に 'ATM took my card.' などと言いますが、我々日本人はどうしても、「えっと、カードを挿入して、それでカードが詰まってるかひっかかってるかしてそれで出てこないから、 insert?そして doesn't move? clog? いや stuck? そしてcome out? don't come
out? いや単数だから doesn't come out?」などとあたふたしてしまいがちです。
「ペンキがはがれた」なども、'the paint came off'などと言いますが、removeや separate などのあまり場面に合致しない単語が出て来がちです 。
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上記(1)へのひとつの対策として、
「骨子だけ先に言ってしまい、その後はその時考える」という方法があります。
たとえばかなり頻繁に登場する、副詞節+主語+述語(「~なので、○○します/です。」や「~にも関わらず、○○だ。」など) という形を挙げて組み立ててみましょう。
よくある形として、 'As~,
述語.’ があります。
例文を作ると、
As(なので) Monday(月曜), work(働く).
①なので(接続詞As)
②状況(月曜日)
③どうだ、何だ、どうする、何する(働く)
文章こそ完成していませんが、①②③の骨子は必須で、同時に①②③だけあれば「月曜なので、働く」という意味の通った文章を作る事ができます。いわゆるサバイバル英語として利用できます。
「①接続詞、②状況、③述語 を先に決め打ちして、その後その他の足りない主語などを補って喋って行けば良い」というイメージです。
特に冒頭の①接続詞と②状況まで話せば、聞き手はあなたがおおむね何を話したいか推測し、相槌を打って待っていてくれるでしょう。
(骨子から組み立てる詳しいテクニックについては別記事でご案内予定です)
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そして(2)情景描写への対策はというと、こちらは複数方法がありますが、まずお勧めするのが、
・take, get, come, go, turn など(fall, grow, spreadなども)広義のイメージを持つ単語の守備範囲の理解
・in, out, up, down, off, over, for, into, onto など前置詞の守備範囲の理解
・take, get, come, go, turnなど(fall, grow, spreadなども)を使った基礎熟語のマスターです。
なぜならこれらで日常生活の状況説明のかなりの範囲がカバーできるからです。先ほどの ATM took my card. も The paint came off. も、take と come を使っています。
トレーニングの際は下記のような、物事の変化を表す表現などを、いわゆる広義の単語での表現を押さえつつ、我々日本人が比較的得意な狭義の語彙を同カテゴリーにくくりながら、情景・場面を表す表現群として体系的に習得して行くと良いでしょう(アウトプットを意識して習得しましょう)。
・上がる:
→ 広義単語バージョン: go up, come up, move up など
→ 狭義単語バージョン: increase, recover, pick up, rise, raise など
・下がる、小さくなる:
→ 広義単語バージョン: go down, get down, slow down, get smaller, fall など
→ 狭義単語バージョン: decrease, lower, decline, drop, shrink, plummet など
・向かう:
→ 広義単語バージョン: go over, come over, head for など
→ 狭義単語バージョン:
・戻る:
→ 広義単語バージョン: go back, get back など
→ 狭義単語バージョン: return など
・広がる:
→ 広義単語バージョン: spread out, stretch out, grow bigger, get bigger など
→ 狭義単語バージョン: broaden, extend, develop, など
・変わる:
→ 広義単語バージョン: turn, turn into, grow into など
→ 狭義単語バージョン: change, alter など
・良くなる:
→ 広義単語バージョン: get better など
→ 狭義単語バージョン: heel, cure, improve など
・悪くなる:
→ 基礎単語バージョン: get worse など
→ 狭義単語バージョン: deteriorate, degenerate など
・停滞するなど:
→ 基礎単語バージョン: get slow, go slow, come slow など
→ 狭義単語バージョン: stay the same, sluggish, idle など
etc.
言語は所詮人が便利に生きるために使うもの。
しらみつぶしのインプットをしなくても、自分にとって便利なところからつまみ食いするのが、実は近道だったりします。